赤尾勇一先生代表挨拶文

本年(平成二十八年)は鹿島神傳直心影流正統十七代大西英隆先生没後五十年、且つ当流

百錬会は記念すべき創立六十周年を迎えました。

 大西英隆先生は一橋大学に学ばれ、当時同大学の剣道師範であった山田次朗吉先生に懇切

なる指導を受けられ、その後、当流の道統を引き継ぐよう求められました。

 「五十歳になりましたら直心影流の流儀を後世に伝えます。」と約束されました。

 誠実な先生は、約束通り五十歳を迎え、一切の名利を棄て、且つ当時の世相の悪化を憂い

剣道による精神復興を期し、昭和三十一年六月十七日、満を持して鹿島神傳直心影流百錬会

を創立され、流儀の「心と形」を後進のご指導に当たり、爾来十年間精力的なご指導と献身

的なご努力を尽くされました。

 しかしながら憾むべし、昭和四十一年九月十七日、秋雨の中に御帰幽になられました。

 享年六十歳でありました。

 創立六十周年を迎えた今年小生八十六歳、老境にして初心忘れるべからず。これは室町

時代に能を大成させた世阿弥の書「花鏡」の結び「しかれば当流に万能一徳の一句あり。

初心忘れるべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。是非とも初心忘れるべからず。時々の

初心忘れるべからず。老後の初心忘れるべからず。この三、よくよく口伝すべし」の心境。

 恩師大西英隆先生の念願であった二十一世紀、日本国家の発展に剣道趣旨に則り指導を

後世に連綿と繋げていくことが、若い方の活躍の一助となることを念願する次第である。

 

                          直心影流百錬会代表 赤尾勇一